このごろ世間にはアヤシゲな風水が流行しているようなので、ひとつちゃんとした風水について語っておきたい。といっても、なにぶん古代中国に根を持つ呪術的な世界だからアヤシさはどこまで行ってもつきまとうが。せめて筋道だけはちゃんとつけて語ってみたい。風水には、方位の風水と地形の風水の二つがあることをまず頭に入れよう。鬼門は方位の風水の代表で、日本の場合、ウシトラの方角、つまり北東がそれにあたると昔から言われている。
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東南はよしなどと書いてあるが、あれも方位の風水のなれの果てだ。地形の風水は、方位と関係なく、山の連なりと姿、川の流れ、水のたまり、のような大地の形状をテーマにするもので、風水的にみて良い場所にお墓を作ると御先祖様は浮かばれて、ひいては今生きている人にも福が多い、なんて説明する。家の前に池があると血筋が絶える、なんて俗説を聞いたことがあるし、実際、明治の中頃に造られた三菱の岩崎久弥邸では、新築にあたり、父の弥太郎が掘った池を埋めて芝生を生やしているが、これも小規模ながら地形の風水に由来すると考えられる。古代中国に発する方位と地形の二つの風水のうち、日本では方位ばかりが優勢になってやがて家相に変質し、一方、地形の方は平安京の建設までが華で、あとは衰えまくってしだいに忘れられてゆく。ちょっと前まで、日本では一部の人をのぞくと、風水なんて言葉すら誰も知らなかったし、土地や家についての呪術といえば家相に決まっていた。