建て替え最終決議の日二〇〇〇年五月二十八日、初夏をおもわせる陽射しに包まれた稲浜中学体育館に、三九五名の地権者を集めて。建て替え決議の是非を問う住民集会が開かれた。欠席した地権者は、委任票を管理組合に託している。一種の不在者投票である。議事が粛々と進められ、地権者が、自らの名を記した一票、一票を投票箱に投じてゆく。参会者たちは、まばたきひとつせず、固唾を呑んで見守った。投票が終わり、集計作業に移った……気が遠くなるほど長い歳月が費やされてきた。
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推進委員のメンバー、このまま住み続けたいと願う住民、どちらにも平等に時間だけが流れた。集計結果がまとまった。司会者が、票数を読み上げる。「議案一、稲毛海岸三丁目団地建て替えに関する件。建て替え決議の可否。議決総数七六八戸のうち……八一・五パーセントの賛成が確認されました。所有者総数七四六人(複数の住戸所有者もいる)においては、六一四人、八二パーセントの賛成が認められました」「おおっ」とパイプ椅了に腰を掛けた地権者たちがどよめいた。住民の五分の四をクリアした。建て替え決議は成立するのか……。司会者は、マイクから離れない。「……しかし、各棟別では、議決件数及び所有者数とも、三号棟、八号棟、九号棟、一〇号棟、一一号棟、一二号棟、一五号棟、二六号棟、合計八棟で賛成数が、法定決議要件の五分の四(八〇パーセント)に達しませんでした。区分所有法の『各棟について同一の建て替え決議が成立した場合のみに成立するもの』との条項に照らし、誠に残念ですが、建て替え決議は、団地として否決されました」そこで、時が、止まった。